むくみの正体としくみ
むくみとは、医学的に定義すると、様々な原因によって細胞の間(細胞間隙)に水分(間質液)が過剰に溜まることによって引き起こされる症状です。
では、なぜ体内に水分が過剰に溜まってしまうのか?その仕組みを知ることによって正しいむくみの予防や解消に繋がります。
体の水分は、どこに何%、あそこに何%と、ある一定のルールにより分布が決まっています。このルール通りに正常に分布されていることを「平衡状態」にあると呼びます。
毛細血管には非常に小さい穴があいており、ここから常に水分を出し入れできるようになっています。この出し入れも一定のルールに沿って水分量が調整されており、「平衡状態」が破られ、染み出る水分が多すぎたり、再吸収がうまくできなかったりすると過剰な水分が皮下に溜まってしまいます。
これがむくみと言われる症状であり、その正体は行き場をなくした過剰な水分なのです。
染み出る水分量が増えてしまう場合、肝硬変やフローゼなどの肝臓や腎臓の病気が主な原因となります。また、血管への再吸収が悪くなる主な原因は、心不全や下肢静脈瘤などで、静脈の流れが悪くなる場合です。長時間の立ち仕事や座り仕事で発生するむくみも同様な理由となります。
病気のむくみって?
私たちの体は水分の平衡状態を保つため、様々な仕組みで対応しています。例として、くっきりとついた靴下の跡も翌朝にはまた元に戻るのは、多くの方が経験していると思います。
これは足に溜まった余分な水分が夜のうちに本体の場所に戻っているからです。一時的な現象であり、一晩経てば自然に消失してしまう、健康な方でもおきるむくみです。
ところが、体がいくら頑張ってもその対応力を上回ってしまうと余分な水分が皮下に溜まったままになり、病的なむくみとなります。医学用語ではこれを浮腫と呼んでいます。
全身性の浮腫は、組織間隙に3リットル以上もの水分が溜ります。これは、血管内を循環している血液量に匹敵するほどです。(体重の5%~10%以上)
このように誰にでも生じるむくみと、病気によるむくみには大きな違いがあることが分かります。
浮腫は体のどこに出やすいの?
間質液は全身にありますが、水分が溜まりやすい場所は決まっています。すなわち、むくみが起きる部位は決まっていると言うことです。
それは、膝下前面(脛周辺)や、まぶたの様な皮下組織が少ない部分。指で押して骨がすぐに触れる場所や、皮膚をつまんで持ち上げられる場所です。
皮膚を上から指で押したり、上まぶたをつまんだりするとへこんだままになり、中々もどりません。この状態になると医師は「浮腫がある」と診断します。程度が重くなるにつれて、元に戻る時間が掛かり、また見た目も腫れぼったくなります。
水分は重力の影響を受けるので、むくみは長時間同じ姿勢でいると下方に出現しやすい特徴があります。なので、寝たきりの方などは、背中、尾てい骨周辺、わき腹の背面など、後面のむくみが起きやすくなっています。
むくみの確認の仕方
- 指で押すとくぼみができて、なかなか消えない
- 靴下のゴム跡がくっきりと残る
- 靴がきつくなって履けなくなる
- 上まぶたから鼻翼にかけて腫れぼったくなり目が細くなる
- 体重が1日に1.5kg以上増える
危険なむくみの見分け方
むくみ=病気ではありませんが、病気の一症状である可能性もあります。重大な病気を見落とさないために、どのような点を注意したらよいでしょうか?
下表のチェックポイントと照らし合わせてみましょう。診察の際には、症状や、経過をよく覚えておき、医師へ伝えることでより、正確な診断を受けられるので、忘れないようにしましょう。
気をつけたいむくみのチェックポイント
- 顔や手がむくんでいる
- 片足だけもしくは両足の差が大きいむくみがある
- 朝になってもむくんでいる
- 急にむくんできた
- むくみと同時に急に体重が増えた
- むくんだ時に以下の症状を伴う
- 息が切れる
- 尿が少ない
- 体が疲れる
◇ポイント1 どこにむくみが出るか?
むくみは起こる場所によって全身浮腫と局所性浮腫に大別されます。
全身浮腫であれば心臓や腎臓、肝臓、内部分泌系の疾病、栄養障害、薬剤の影響が原因となる特発性浮腫が疑われます。局所性浮腫は、静脈やリンパ管の疾病、炎症、血管神経性浮腫、内分泌系の疾病などの病的浮腫と、健康な人でもなる体位性浮腫(長時間同じ体勢でいる為に起きるむくみ)が含まれます。
注意すべき点は、足以外の顔、手などにむくみが起きる全身性で、病気の存在が疑われます。逆に、「血管神経性浮腫」では、足ではなく顔、首、唇がむくんでくる特徴があります。
むくみの8~9割が全身性で残りの1~2割が局所性であると言われています。
◇ポイント2 左右対称にむくんでいるか?
むくみが左右対象の場合、全身性浮腫、体位性浮腫の可能性が高くなります。逆に非対称である場合は局所性の静脈やリンパ、炎症性などの疾病が疑われます。つまり、浮腫が片側のみの場合は浮腫が起きている側に何らかの疾病が隠れている可能性が高くなります。
◇ポイント3 どんな時にむくみがでるか?
一日の内でむくみがでたり治まったりする変動は病気のむくみかどうか判断するために極めて重要です。健康であれば、夕方に出現したむくみが翌朝にはほぼ消えているはずです。体の水分平衡状態を保つためにの対応機能がしっかりと働いている場合は、むくみが軽度であるか、病的なむくみではないと考えられます。長時間同じ姿勢でいた場合の問題が関係しますが、元に戻るむくみである場合は安心なことが多いです。
逆に起床時にもむくみがはっきりと残っているような場合は注意が必要です。病気が存在することも考えられます。一日の中での体重変動も参考になり、1.5kg以上の体重変動がある場合には「特発性浮腫」の疑いもでてきます。
むくみが急激に生じてきたか、慢性の経過であるか、といった出現後の経過も大切です。急に片足だけが腫れたら静脈の疾病である深部静脈血栓症の疑いもでてきます。
◇ポイント4 全身にむくみ症状はあるか?
むくみは疾病の一症状である可能性もあるため、それを見つける上で他の自覚症状も非常に重要になります。食欲の有無、動悸、息切れ、便秘、低体温など、他の症状が併発する場合は疾病の可能性が高くなります。また、体重の増加、尿量の変動、夜間尿の有無も参考になります。
◇ポイント5 服薬はないか?
薬もむくみの原因となります。これは医師でも見逃しやすく、新たな服薬での原因究明は容易でも長期に渡る服薬をしている場合には見落としてしまうことがあります。病院で処方される薬では糖尿病の薬、血圧の薬などが副作用としてむくみを発症させます。服薬があるかたは、薬の副作用に関しても医師に相談しましょう。
以上、5つのポイントにご自身の症状を照らし合わせて、少しでも気になる点がありましたら医師の診断を受けることをお勧めします。
むくみを起こす病気も参考にしてください。
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