片足がむくむ場合


片足がむくんだ場合に考えられる病気と症状、特徴など

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤は、15歳以上の日本人の43%、30歳以上では62%もの人にが見られるという調査報告もある程身近な病気で、女性に多く認められ、立ち仕事、加齢、遺伝、妊娠などが下肢静脈瘤ができやすくなる要因と言われ、肥満や便秘はそれを悪化させるとされています。

下肢静脈瘤の発生原因は血液の逆流です。普段は足の静脈にある弁が血液を心臓方向にしか流れないようにしているのですが、この弁が上記のような要因により機能が失われると、足の血液が足先の方向へと逆流するようになり、血管の中の圧力が高まり静脈が膨れ、静脈瘤となります。

下肢静脈瘤があっても全く症状がない人もいまが、足にだるさ・重さを感じる、むくみや痒みといった症状が出てきます。静脈中のある足だけがむくむようでしたら、むくみの原因は下肢静脈瘤の可能性が高くなります。静脈の流れの悪さが続くと、皮膚に湿疹や色素沈着、潰瘍ができることもあります。

治療が必要な場合は、うっ滞性皮膚炎がおこっている場合、静脈瘤による症状がありつらい場合、外見が気になる場合の3つです。命に関わるような病気ではないので、あわてて受信する必要はありません。心配な場合は血管外科や外科で診察してもらいましょう。

深部静脈血栓症

足には深部静脈という太い静脈があり、足の血液の90%以上を心臓へ送っています。この深部静脈の流れている血液が固まってしまい、決戦になってしまう病気が深部静脈血栓です。

深部静脈に血栓ができると、足の静脈の中の血液は十分に心臓へ戻ることができず、足に血液がうっ溜してしまいます。この為、足は赤紫色に腫れてしまいます。

血栓ができる原因には、血液が固まりやすくなる病気や、カテーテルなどによる血管の損傷があります。また、血液や血管に異常がなくても、血液がゆっくりとした流れになると、血液は固まりやすくなっていきます。

手術の後や長時間足を使わないでじっとしている時などには血液の流れが非常にゆっくりとなっており、血液が固まってしまう危険が出てきます。足の筋肉(筋ポンプ作用)を長時間使わないと血栓ができやすくなるので、寝たきりになった場合にも足の静脈に血栓ができやすくなります。

足の深部静脈血栓症の合併症に肺血栓塞栓症があります。足の静脈の中にできた血栓が剥がれ、血管を流れて肺へ行き肺動脈に詰まってしまう病気です。小さな血栓の場合は症状はでませんが、大きな血栓が飛ぶと胸痛や呼吸困難、失神、時には即死することもあります。

飛行機の中で深部静脈血栓症が起こり、それにより肺血栓塞栓症を起こしたものがエコノミークラス症候群と呼ばれている物です。足を動かさないことが主な原因なので、時々足を動かすことで筋ポンプ作用を促し、血液のうっ滞を取ることが予防になります。

単なるむくみと思っていても、エコー検査で深部静脈血栓症と診断される方もいます。急に片方の足だけが腫れたり、むくみに加えて足の皮膚が赤っぽくなっている時には血管外科で診察を受けるとよいでしょう。

リンパ浮腫

静脈の流れが悪くてむくむ場合は、 血管の怒張(血管が平常時より膨れること)、どす黒い色になっていくことが特徴ですが、リンパ浮腫は血液が無関係のため、全体的になんとなく膨らんだような白いむくみが特徴です。

間質液は末梢で毛細血管に再吸収されたり、リンパ管に吸収されたりして最終的には静脈に合流しますが、そのリンパ管が手術で壊されたりなどの原因で間質液が末梢で貯まってむくみとなります。リンパ浮腫とは、リンパ管の流れが悪いために、タンパク質などの物質やそれに伴う水分が皮下組織から排除されず、皮下に水分やタンパク質などが溜まった状態を言います。

リンパ浮腫の原因として最も有名なのは子宮がんや卵巣がんの手術によるリンパ節の切除で、乳がんの術後では腕に起きることもあります。これらを二次性リンパ浮腫と言います。逆に言うとがんの術後でなければリンパ浮腫になることは極めて少ないと言えます。リンパ浮腫で明らかな原因がなく、先天的としか考えられないものを一次性リンパ浮腫と言います。

治療は複合的理学療法による保存的治療が行われます。むくんでいる部分を上げて間質液を体幹部に戻し、日常生活では弾性(着圧)ストッキングやスリーブで圧迫してむくみが落ちてこないように押えるのが基本となります。同時に体を動かすことも重要で、弾性(着圧)ストッキングやスリーブを着用しながら行うことでリンパ管へのマッサージ効果を期待できます。弾性(着圧)ストッキングやスリーブは入浴時と就寝時以外はずっと着用することが必要です。就寝時にはむくみのある腕や足を心臓より上に上げておきます。根気よく続けることにより確実に効果が現れ、足や腕が細くなり、良い状態のまま維持できるようになります。

リンパマッサージ(リンパドレナージ)も行われますが、これはサポート的な役割となります。健康な人の場合とは異なり、むくんでいる箇所の近くにあるリンパ節には流せませんので、他の場所にあるリンパ節へ間質液を導くという考えとなります。例えば、左足のリンパ浮腫でなら、左腋の下のリンパ節へ流していきます。

リンパ浮腫に使われる弾性スリーブ・ストッキングは通常の物に比べると圧や弾力がはるかに強力で、価格も高く数万円になるものまであります。その為、2008年の4月から保険が適用されるようになりましたが、弾性着衣以外での治療にはまだ保険がききません。また、残念なことに2008年4月以前にリンパ浮腫を発症した方、一次性リンパ浮腫の方にはこの保険は適用されません。

麻痺

脳梗塞の後遺症で、足に麻痺が残ることがあります。麻痺のある足はむくみやすく、これを麻痺性浮腫と呼びます。麻痺のために足を十分に動かせず、筋ポンプ作用が働かない為に血液がうっ滞しやすく、また血管透過性が増して、血管からの血液の染みだしが多くなるため、むくみが起こりやすくなるのです。

むくみのある足の皮膚は弱っている為、ちょっとした足の怪我でも皮膚に傷ができやすく、治りが悪くなります。むくみを起こさせないように時々足の拳上や運動・マッサージをしてあげるとよいでしょう。